わたしという寓話
2015-12-23
総合批評誌『ヱクリヲ』 Vol.3のお知らせ、2015年もありがとうございました
このたび、総合批評誌『ヱクリヲ』 Vol.3にて、作家・青木淳悟さんのインタビューをお手伝いさせていただきました。青木さんはデビュー当時から追い続けている大好きな作家さんの一人でしたので、たいへん貴重な体験となりました。『ヱクリヲ』はこちらのサイトより、通販で購入することができます。みなさま、どうぞよろしくお願いいたします。
***
すっかりご無沙汰しているあいだにいくつかメールをいただきましたが個別にお返事ができておらず、大変申し訳ありません。ありがとうございます。この場でお礼を申し上げます。
2015年もあとわずか。夏頃から本格的なお勤めに出てしまったため、なかなか思うようにブログの執筆に時間を取ることができず、ヤキモキする日々が続いています。来年はもう少しこちらの更新にも力を入れていきたいと思っています。Apple Musicが始まってから新しい音楽も少しずつ聴くようになりましたので、そういった内容のものをいくつか。そして、せっかく上京したのだから...と、田舎では疎遠になっていた映画館にもなるべく足を運ぶようにしていますので、印象に残った作品についても追々書きたいと思っています。
ちなみに、今年、映画館で観た作品を思い出せる限り書き出してみると...
・さらば愛の言葉よ / ジャン=リュック・ゴダール(2014年・フランス)
・エッセネ派 / フレデリック・ワイズマン(1972年・アメリカ)
・ひなぎく / ヴェラ・ヒティロヴァー(1966年・チェコ)
・やさしい女 / ロベール・ブレッソン(1969年・フランス)
・インヒアレント・ヴァイス / ポール・トーマス・アンダーソン(2014年・アメリカ)
・神々のたそがれ / アレクセイ ゲルマン(2014年・ロシア)
・熊座の淡き星影 / ルキノ・ヴィスコンティ(1965年・イタリア)
・駅 / クシシュトフ・キェシロフスキ(1980年・ポーランド)
・わたしの叫びを聞け / マチェイ・J・ドルィガス(1991年・ポーランド)
・ザ・ヴァンパイア / アナ・リリー・アマポアー(2014年・アメリカ)
・マリア・ブラウンの結婚 / ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー(1979年・ドイツ)
・ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール / スチュアート・マードック(2014年・イギリス)
・コールド・フィーバー / フリドリック・トール・フリドリクソン(1995年・アイスランド)
・デヴィッド・ボウイ・イズ / ハミッシュ・ハミルトン(2013年・イギリス)
・そして僕は恋をする / アルノー・デプレシャン(1996年・フランス)
・アンジェリカの微笑み / マノエル・ド・オリヴェイラ(2010年・ポルトガル)
やはり旧作が多いように感じるのですが、DVDが高価で入手困難な、前々から観たいと思っていた作品はもちろん、映画好きなお友達に誘われて新たに挑戦した監督の作品もあり、少ないながらもなかなか充実していたのかな。ゴダールが新作なのが凄いですが(笑)来年はお友達の影響で侯孝賢やエドワード・ヤンの作品にも触れる機会がありそうです。そして、オリヴェイラ監督の追悼特集も一年を通じてあるようなので、今からとても楽しみにしています。
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
2015-08-08
TEMPLES テンプルズ『Sun Structures』(2014)
スウィンギン・ロンドンの嵐が吹き荒れるカーナビー・ストリートをBIBAのワンピースを着て闊歩するのが夢だった。アントニオーニの『欲望』に描かれたあの時代の、曇り空のロンドンを生きるのが…… 仲間とLSDを嗜んで、お気に入りのレコードをかけて夜を踊り明かす。ビートルズの新譜を心待ちにしながら、不良ぶっているストーンズにもひそかにオネツで、部屋には案の定ドアーズのポスターが貼ってあったりして、ボーイフレンドはきっとクリームやバーズに夢中……
TEMPLES(テンプルズ)のデビューアルバム『Sun Structures』は、そのような幻想が2014年の今にでも現実のものになるのではないかという錯覚をもたらしました。2012年にロンドン郊外の田舎町で結成された20代半ばの彼らは、ギターサウンドを基調とした典型的な4ピースバンドではあるのですが、リバーブが深くかかった浮遊感溢れるサウンドにクラシックなサイケデリック・ロックの幻影を展開してみせます。甘い呪文のようなハープ、華やかに揺らぐ鈴の音、哀愁を帯びた魅惑的なオルガン、やけに反響するドラム、豊かに歪む12弦ギター。はたまたジョージ・ハリスンが用いたインドのへんてこな音、カート・ベッチャーの魔術的なハーモニー、不意に繰り出されるボラン・ブギー……
いかにも60年代的な、あるいは60年代の影響を直に引き継いだ70年代の音楽シーンを否応無しに浮かび上がらせる彼らの楽曲に、特出した真新しさを見出すことは難しいかもしれませんが、テンプルズの魅力はむしろレコーディング技術が進歩した現代に徹底して60年代の音そのものを作り出そうとする姿勢にあります。それを懐古主義と一笑することは簡単ですが、ここまで露骨に馬鹿正直に、60年代への愛を表出するバンドの出現を私たちはずっと待ち焦がれていたのではなかったでしょうか。音楽が力を持っていた時代を愛し、音楽の可能性を頑に信じている新たな世代が世界中に散らばり、世界が熱狂したひとつの時代に想いを寄せている……テンプルズの登場はまさにその現実を象徴する出来事であって、彼らは古きものへの憧憬が露呈されることを怖れずに、デビューアルバムをもって啓示しました。
ヒッピーは絶滅し、サマー・オブ・ラブはとうの昔に終焉を迎え、もはやどんなに切望しても曼荼羅にテクニカラーを塗りたくったあの時代を生きるという願いが叶うことはありません。ですが、作り出すことはできるのです。それは必ずしも時代の逆行を示すものとは限らないでしょう。テンプルズの屈託のないやさしいメロディーは未来を祈るように響きわたります。シド・バレット―マーク・ボラン―デヴィッド・ボウイ……UKロック史における偉大な道化師の系譜を見事に踏襲したかのような佇まいのフロントマンに、私たちはスターの面影を重ねながら、いま、壮大な夢を託そうとしているのかもしれません。
*****
2015年2月22日に開催された Hostess Club Weekender にて彼らのステージを真近に観ることができたのですが、意外や意外、なかなか骨太なロックを響かせてくれた驚きと、若い女性の黄色い声が耳に残っています。かく言う私もミーハー心丸出しで前方へ移動し、浮世離れした甘いルックスにうっとりしていたのは言うまでもありません。
2015-05-01
総合批評誌『ヱクリヲ』 Vol.2に参加いたしました
およそ一年振りの更新になりました。
この一年は上京して新生活を始め、慣れないお勤めに出るなどして慌ただしく過ごしておりました。
映画や音楽や小説に傾ける愛情は相も変わらず(むしろますます募るなか)こちらに書く時間がとれずにいましたので、2015年は(といってもすでに5ヶ月も経過...)徐々にですがこれまでと同じようなスタンスで文章を綴ることができればと思っています。
さて、このたび 総合批評誌『ヱクリヲ』 Vol.2 に参加いたしました。
5月4日(月)に東京流通センターで開催される第20回文学フリマにて発売いたします。
ブース番号は エー54 でございます。
『ヱクリヲ』 Vol.2はアンドレイ・タルコフスキーとデヴィッド・シルヴィアンの2大特集が組まれており、 私はデヴィッド・シルヴィアンに関する文章を寄せました。
80年代よりタルコフスキーへの敬畏を表明してきたシルヴィアンですが、タルコフスキーの死によって、もはや叶う事のなかったこの二人の共演を、エクリチュール(書かれたもの)によって実演させる、という目的で立ち上げられた企画です。タルコフスキーの父であるアルセーニーによる詩の新訳も掲載されております。
「JAPANのフロントマン」はもとより「美青年」として我が日本で名を馳せていたシルヴィアンも、近年のその地味な活動にはやや難色を示される傾向もありますが、当時のノスタルジーに浸りつつ、現在の彼の魅力も本誌をお手に取って感じていただければ幸いです。
レオス・カラックス特集を掲載した『ヱクリヲ』 Vol.1も同時に販売いたします。文学フリマ終了後には、ネット販売も開始する予定ですので、関心を持たれた方はメールにてご一報下さい。追々詳細をお伝え致します。
どうぞよろしくお願いいたします。
feelsick26@gmail.com
登録:
投稿
(
Atom
)