言わずもがな渋谷系界隈でだいぶ重宝されていたらしい、1973年のイタリア映画『セッソ・マット』のサントラは必聴。メインテーマの「sessomatto」はやはり名曲中の名曲!フリッパーズ・ギターの「Groove Tube」という楽曲でも使用されていました。
お姉さんの吐息のような色っぽいヴォーカルに笑い声と喘ぎ声がコラージュされていくという、なかなかぶっ飛んだ内容にもかかわらず上品でキャッチー。他の曲も渋谷系のイメージに代表される「小洒落た」という言葉に要約されてしまうにはどこか惜しいような、日本人の琴線に触れる郷愁を誘う情緒的なメロディが多く、サンプリングのネタに引っ張りだこの理由もなんとなく分かるような気がします。
音楽が評判になったことで、映画『セッソ・マット』は2005年に日本で初公開されました。「Sessomatto」とは「性」と「狂気」を合わせた造語らしく、日本では『色情狂』と、これがまたストレートに訳されていたのが素晴らしいです。ちなみにアメリカでのタイトルは『How Funny Can Sex Be?』で、全9話のオムニバス形式の馬鹿馬鹿しい能天気なお色気コメディです。
肝心な映画の内容はお洒落なサウンドのイメージをあっけなく裏切ってしまったようだけれど、よくよく考えるとサントラのジャケットはセクシーなナースの恰好。そして実は私、この映画は未見なのだった。映画を知らないのになんでサントラを買うんだ?と突っ込まれそうですが、これも90年代、渋谷系の大いなる遺産だと思っています。
音楽を担当したアルマンド・トロヴァヨーリは200本以上の映画を手掛けたイタリア映画界の至宝、もはや巨人とも言うべき存在。今年の2月に世界中の音楽ファンに惜しまれながら95歳で亡くなりました。『黄金の七人』『女性上位時代』『昨日・今日・明日』と、日本でもお馴染みのイタリアン・コメディを彩る楽曲を数多く残し、サントラも人気が高くマストアイテムです(廃盤になっているものが多いけれど)。
トロヴァヨーリはもともとジャズバンドでキャリアを積んだ人で、その後カンツォーネの歌手に楽曲を提供したこともあり、ジャズ畑で培った洗練された都会的なサウンドと、民謡や歌謡曲などの庶民的な音楽が彼のスコアには反映されています。特にキッチュなコメディ映画では後者の色合いが顕著。
トロヴァヨーリのユーモラスでキャッチーでお洒落なサウンドを生み出すセンスに触発された若者が、20年後の日本で一大ムーブメントを巻き起こしたことを考えると、本当に偉大な人だったのだなぁと感じます。今更ながら。
YouTubeを検索していたら、「Groove Tube」のPVを発見!初めて最後まで見ましたが、解散後の彼らしか知らない私はとっても感激。91年にこれ!やっぱりこの人たちすごい面白かったんですね。
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