2013-07-12

楚々としたウィスパー・ヴォイス『Swansong for You』The Gentle Waves(2000年)


The Gentle Wavesは日本でも絶大な人気を誇るスコットランドはグラスゴーの大所帯バンド、Belle and Sebastian(ベル&セバスチャン)でチェロとヴォーカルを担当していたイザベル・キャンベルのソロ・プロジェクト。残念ながら彼女は2002年にベルセバを脱退してしまったけれど、このアルバムをリリースした当時はまだバンドに在籍していた。

私が初めて聴いたベルセバのアルバムは彼女がバンドを去った後のものだけれど(ああ、ベルセバに出会ったときのトキメキは一生の宝物だろう!)、後追いで過去のアルバムを聴いていくうちに、スチュアート・マードックのぼそぼそと呟くような優しい声に呼応する、透き通ったウィスパーボイスが心地良く、女の子のウィスパーな歌声に弱い私としては、イザベルはとても気になる存在になった。

インディー・ポップ、ネオアコ系と聞くと、90年代からの流れでどうしてもお洒落系アイテムに直結してしまいがちだし、日本でもベルセバというと大体がそのような認識だと思うけれど、ステージ以外で動く彼らのビデオを見ると、実に頼りなさそうな冴えない感じのお兄さんの集団で、お洒落どころかもしかしたらダサイのである。単なる田舎のお兄ちゃん、というレビューを昔の雑誌でも読んだことがある。まァそこがまた彼らを大好きな一因でもあるのですが。

最年少のイザベルはそんなバンドにおいてキュートなルックスでマスコット的な存在だった。カジ・ヒデキもメロメロで大絶賛していた!お顔はもちろんだけれど、スクールガール風のファッションも可愛いし、可憐で繊細な声を持ち、チェロを弾きこなし、ソングライティングの素質を備えた才女でもあるのだから。一時期ぽっちゃりしていたけれど、そんな彼女にも愛嬌があって親しみを感じてしまうもの。


『Swansong for You』はイザベルのソロ2枚目のアルバム。1stに引き続きベルセバのメンバーも参加している。イザベルをフィーチャーしたベルセバサウンドといったキャッチーな印象の1stに対し、本作は地味で聴く人を選ぶだろうけれど、イザベルの個性がしっかりと全面に出ている。無駄な装飾が剥ぎ落とされたシンプルなサウンドで、楚々とした彼女の声に満たされる。陰鬱でメランコリックなムードの曲が多いのだけれど、気が滅入るほどではないのはやはり砂糖菓子のようにふっと溶ける甘い声がバランスを保っているように思う。

しかしイザベルの場合はそんじょうそこらの雰囲気系ウィスパーヴォイスとはまた違っていて、自身で作曲もしてしまうのだから、内気な囁きヴォイスもどこか毅然としていて、一本貫いた強さ、可愛さの奥底に潜んだ魔力をも感じさせるのだ。ベルセバのイメージも手伝って、どこまでも神聖で不純なモノを寄せ付けない潔癖さが彼女の音楽にはあります。



スチュアート・マードックが撮影したという黒猫のジャケットも、レトロな60年代風のビデオクリップもイザベル(というかベルセバ)らしくて、ハートのど真ん中を貫く可愛さなのだ。



Swansong for You
Swansong for You
posted with amazlet at 13.07.11
Gentle Waves
Ais (2000-11-02)






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