コラリー・クレモンは、フランス本国では21世紀のゲンスブールとも名高いミュージシャン、バンジャマン・ビオレーの9歳年下の妹で、兄のプロデュースのもと2001年にデビューしています。デビュー時の彼女はまだ大学在学中で、才能豊かな兄の後ろ姿を見て育ち、さらには同じ道を追いかけるといった形で、歌手としての才能を発揮、もしくは兄の手によって開花させたようです。彼女の一番の魅力は60年代のフランス・ギャルやフランソワーズ・アルディを彷彿させる舌足らずでどこか気怠いような雰囲気を持つウィスパー・ヴォイスで、これがもうウィスパー・ヴォイスマニアとしましては、最高の掘り出し物(といったら失礼かもしれませんが)で、長い間待ちわびていたウィスパー・ヴォイスのミューズといった感じの女の子。ジェーン・バーキンやヴァネッサ・パラディに連なる正統派フレンチ・ロリータを思わせます。しかし彼女はジェーンのようにセクシャルでもヴァネッサのように小悪魔的な存在でもなく、健康的な普通の明るい女の子といった印象で、そのことは等身大の女の子の気持ちを歌う傾向の歌詞にもあらわれているように思います。
彼女はこれまでにアルバムを3枚出していて、『ルゥからの手紙』(2001年)『バイバイ・ビューティー』(2006年)『Toystore』(2009年)、これらすべてのアルバムを兄のバンジャマン・ビオレがプロデュースしています。私はデビューアルバム『ルゥからの手紙』がもっとも好きで、アコースティックな楽器に彼女のウィスパー・ヴォイスが重なるだけの全体的にシンプルな作りになっているのですが、彼女の一番の魅力である歌声を最大限に味わいつくすことができる最良のアルバムです。彼女は少し早口で歌うところがとっても可愛い。『ルゥからの手紙』は秋に似合うアルバムで、落ち葉の舞う夕暮れ時なんかに聴くと最高の気分です。
2枚目以降はがらりと雰囲気が変わってロックになり、とはいってもやかましいほどではなくて、肩の力の抜けたような脱力系のサウンドが多く、ガーリー・ロックという言葉が当て嵌まりそうな爽やかでキュートな楽曲に仕上がっています。ウクレレやピアニカなどの楽器を詰め込んだ3枚目も遊び心も感じられて悪くはないのですが、彼女の魅力はやはり声だと思うので、琴線に触れるようなメロディーをさらりと歌ってもらいたい。そういう意味で、やはり彼女はデビューアルバム『ルゥからの手紙』ですでに完成されていたように思います。同じ82年生まれというだけの理由からまたもや勝手に親近感を抱いてしまっている私ですが、次のアルバムも楽しみです。
上の動画に流れるのは『ルゥからの手紙』に収録されている楽曲なのですが、ちょうどゴダールの『女と男のいる舗道』のアンナ・カリーナをフィーチャーした素敵な動画があったので。
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