2012-03-21

ニュー・ウェーヴをボサノヴァで、その名もヌーヴェル・ヴァーグ!



私のiTunesライブラリの再生回数で常にトップに居座り続けているアルバムが、フランスの男女混合ユニット、ヌーヴェル・ヴァーグの1st『ヌーヴェル・ヴァーグ』(2004年)です。ヌーヴェル・ヴァーグは70年代後半〜80年代初期のパンク、ニュー・ウェーヴの音楽をボサノヴァにアレンジして、さらにはジャズ、ブルース、スカ、レゲエといった要素を盛り込んだカバーアルバムをいくつか発表しているのですが、「ヌーヴェル・ヴァーグ」というユニット名はフランス語で新しい波の意味、「ボサ・ノヴァ」はポルトガル語で新しい波、「ニュー・ウェーヴ」はもちろん...というわけで、うまいぐあいに三拍子揃えるという茶目っ気たっぷりのユニットなのです。そしてこの1stアルバムのジャケットはおそらくゴダールの『女と男のいる舗道』の娼婦ナナに扮したアンナ・カリーナではありませんか!2ndアルバムのタイトル『Band a Part』もゴダールの作品(邦題『はなればなれに』)からとってつけていたり、さらにはベスト盤のジャケットがゴダール映画のクレジットの雰囲気そのままにといった感じで、映画界のヌーヴェル・ヴァーグにまで目配せをするという徹底ぶり。これだけでもう私は完全にノックアウト状態なのです!

ヌーヴェル・ヴァーグはプロデューサーでもある男性二人が中心人物となって、曲ごとにアーティストを変えるという方法をとっていて、女性ヴォーカルがメインなのですが、一枚のアルバムで様々なヴォーカルが聴けるというのも彼らの魅力のひとつとなっています。ポスト・パンク、ニュー・ウェーヴなる音楽が世界を席巻していたまさにその時代に生まれた私は、正直、恥ずかしながらヌーヴェル・ヴァーグがアルバムで取り上げるオリジナルの楽曲をほとんど知りませんでした。洋楽はビートルズにはじまり、ビーチ・ボーイズ、ボブ・ディラン、ドアーズ、クリムゾン、さらには渋谷系なるものに感化されてからというもの、60年代後半のテクニカラーを塗りたくってフラワーをちりばめたあのサイケデリックな世界、サイケデリックな音がどうしようもなく好きで、デヴィッド・ボウイを聴くようになり、やっと70年代のロックも少しずつ聴くようになったのですが、パンク・ロックはあまり得意ではなくて(JAMとClashは例外なのですけども)、その後のニュー・ウェーヴもなんだか気が乗らなくて、何から聴いて良いのかわからないというのもあったのですが、それでも機会があればいつかちゃんと聴こうと思っていた、そんな矢先に出会ったのがこのヌーヴェル・ヴァーグだったのです。

私にとってこのヌーヴェル・ヴァーグのアルバムは青春時代を懐かしむといったような感傷的な記憶を呼び起こすものでも、ボサノヴァ風のアレンジに対する目から鱗の驚きというような感覚もほとんどないに等しいのですが、やはり音楽ファンを唸らせるアルバムなだけあって、私のようなニュー・ウェーヴを体験していない人間にも面白い発見があります。時代を遡ってオリジナルを聴いてみるというじつに単純な発想を実行に移したまでですが、それでもかなりの収穫がありました。1stアルバムの中では「This is Not A Love Song」という曲がとても気に入っているのですが、このオリジナルはPILで(もちろんPILについてもピストルズの人...というだけの認識)私はヌーヴェル・ヴァーグのメロディアスなアレンジで聞き慣れているものだから、オリジナルを聴いたときはあまりの能天気っぷりに思わず仰け反ってしまったのでした。このヌーヴェル・ヴァーグ、耳障りの良いお洒落なBGMとして流すのもそれはそれで素敵だと思うのですが、オリジナルを聴いてみるとまた別の発見があって面白い、奥が深いのです。そんなわけで、未体験のニュー・ウェーヴを少しずつ追いかけていけたら良いなあと思っているところです。





Nouvelle Vague
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