この『ソロ・ピアノ』というアルバムはタイトルのとおり、ピアノ一本で表現された16の小品を収めたもので、暗いフランス映画のような陰鬱さとジャズっぽい躍動感(といってもかなり抑えてあります)を兼ね合わせた、夜または雨、グレーな曇り空にふさわしい、繊細で静かなアルバムです。ピアノの音が小さくとても柔らかいのですが、弦を布に包むなどの独特なスタイルで演奏しているようで、ペダルを踏んだ際の摩擦音や鍵盤を叩く音も微かですがそのまま録音されています。暗い夜などイヤフォンを使用しながら耳をそばだてて聴いていると、いつの間にか世間からぽつんと離れてしまったかのような、自分とそこにはピアノしか存在していないのではないかというような、心地良い浮遊感に浸ることができます。クラシックともジャズとも違う、本当に静かで色の感じられないアルバムなのですが、決して無味乾燥というわけではなく、むしろ静寂の中に響く雨音や微かな風の音のように自然音としてピアノの音が存在するように感じられるのです。
「ピアノはどんな楽器よりも多くの色を表現できると人は言う。確かにそこには白と黒がある。古い無声映画のようにね。僕はこれらピアノの曲たちを壁に映された影絵のように思う」ゴンザレス
そして私は今日も、一曲目の「GOGOL」のイントロで心を掴まれ、そのままゴンザレスの影絵劇場に引き込まれていくのでしょう。
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